誰かの心臓になれたなら
作者 ポメチー 得点 : 2 投稿日時:
神様、もう一度だけあの夢の続きを見させて。
生きる体温をくれた指が解けて、形のない痛みに変わった。
生きる理由も生まれた意味も、こんなすっからかんな頭じゃわかりゃしないと気付かせてくれた友達は、
「"こんな世界"だなんて嘆くキミの瞳に、雨上がりの七色を見せてあげる」と言ってくれた友達は、もういない。
「息を止めても心臓は打つ。立ち止まっても地球は回る。時間は待ってくれない」なんていう言葉が、ふと思い浮かんだ。なんで今になって。
「甲斐無い心臓を差し出し、君を救い出せる術を手に入れても、こんな醜い姿を誰が愛してくれるの?」
泣きながら君の手を握ってそう言った。
自分の肌に触れる友達の手が冷たい。
思い通りじゃ無い世界だけど、どうか、君の明るい性格で、どうか醜いくらいに美しい愛でこの心を抉ってくれよ。
友達と出会ったのは、高校1年の頃。
小・中と虐められていた僕は「明日を生きたい」だなんて思いもしなかった。
そんな時に出会ったのが、君だった。
「どうやって心は在り続けると思う?」
この質問に答えられず、戸惑っていた僕は首を傾げた
「答えは肉体と同じ。原動力となる心臓が血液を運び、存える。保たれる。続くの」
理科の授業で習ったことを繰り返されただけだったので、「なんだ」と思っていた。
「では、その"心臓"とはなんでしょーか!」
「へ?」
いきなり過ぎたので、変な声が出てしまった…
「えっと…うーん…」
「あと20秒~」
「形がなくて、目には見えない。その…その命を必要とするもの」
なんとなくで答えたから、変な答えになって無いだろうか?確認の為、彼女の顔をみると…
「おお!いいじゃん!それ!」
「あ、いいんだ」
「うんうん!新しい答えが出来たよ~!」
「あっそ。なら良かった」
そう言って会話を無理やり終わらせようとしたが、彼女はそうはいかないらしい。
「つまり、君の心が壊れたり、失われてないのは、きっとどこかでその心臓がまだ動いてるってことだよ~。君も誰かの心臓になれる。だから、どうか強く生きて。」
この時はその言葉の意味が分からなかった。でも、今となれば必要以上に分かる。
『誰もが此処で生まれ、此処で命を落とす。』
そう君は伝えたかったんだろ?
あの頃の僕は怖かったんだ。
傷が消えてしまうことを…いつか僕も、あの頃を思い出して、悲しみを感じなくなってしまうのではないかと。そんなことを、何処かで恐れていた。
肉体が朽ち果てようと、思いは風化しない。
だって、彼女は今だってこうして、僕の心に血を廻らせる。
いつしか、君が僕にくれたように。
僕も_______
誰かの心臓になれたなら。