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タイトル:オカルト探偵(さぎし)、今日も騙る(完結版・初稿)の批評 投稿者: ギンブナ

始めまして。ギンブナと申します。
あらすじは未読の状態でエピローグまで拝見しました。
『ストーリーとキャラクターは面白い。ただ描写不足などで没入感が妨げられる箇所が多い』という印象です。

細かい内容に触れる前にお断りさせてください。
私は普段、一般小説の海外怪奇幻想物(ホラー)ばかり読んでいる者です。
なので、ライトノベルの批評としては見当違いのことを多々言っているかもしれません。そう感じたら聞き流していただければと思います。
また、何度か「例えば、」と言って例えを出していますが、単なる説明の補強なので、こうしろという強制の意図はありません。

〇描写・演出不足について
例えば、第一話でルイスが犯人捜しを依頼した直後に、瓜坂と矢加部が顔を顰めるシーンですね。
失踪したらしい、との内容を淡々と語るだけでそこまで不快に思うものかと首をかしげました。
ルイスが「余所行きの笑顔のまま」とか「嬉しそうに」など犯人捜し依頼にそぐわない様子でしたら、印象が変わって作中人物と読者の認識ずれが発生しなかったかもしれません。

連作を通して、いくつかモンスターが登場していますが、外見描写があっさりしていて物足りなく感じました。
ホラー物ではモンスターは花形なので、名前を出すだけで終わらせず、少し行数を使ってでも読者に生々しく存在を想像できるような描写が欲しかったです。
(個人的な好みでは、具体的な名前が出なくとも恐ろしさがわかるような感じだと素敵ですが、わかりやすさを重視するライトノベルではNGかもしれません)

上記と関連しますが、盛り上がるシーンの前にタメというか動作描写や演出があると、読者の期待感が高まるかと思います。
例えば、四話上ラストの瓜坂登場シーン。スレ主様は「知らぬ間にそこにいた」という風に書いたのかもしれませんが、一読者としてはドアを蹴り開けるなどして、格好良く登場してほしくありました。
例えば、四話下のルイスがデュラハンを召喚するシーン。
 ルイス狂気の笑みを浮かべる
→ルイス「~サヴァンには少し早いけれど……」
→杖なり魔法陣なりが妖しく光り出す
→ルイス「『オグマに首を絶たれ、なお死なぬ者よ!』」
→杖なり魔法陣なりから雷が落ちる
→雷着弾地点にデュラハン登場
ベタな演出ですが、ルイス最大の見せ場と思いますので、これくらい派手でもったいぶってもよいかなと。

〇情報開示について
一話で瓜坂がルイスに初めて会うシーンで、情報開示漏れがあるように見えました。
 ルイス外見描写「金髪美少女」「チェックキルトをあしらえたバッグ持ち」
 ルイス台詞「貴女は瓜坂探偵さんで合ってますか?」
→瓜坂、ルイスの説明をする
 ①「『ウリ』の発音と外見から日本人ではない」
 ②「タータンチェックの鞄に織り込んだ自衛用の術式」
 ③「鞄のボタンがケルトの魔除け石」
読者に開示された情報と、瓜坂の話した内容にずれがあります。
 ①:「瓜坂探偵」の字面から読者が発音を類推するのは困難です。
   例えば、地の文に発音への疑問がある、もしくは「ウリ坂探偵」とあれば読者と瓜坂の持つ情報が同じになります。
 ②③:外見描写の中に類推できる情報が一切ないので困惑しました。
語り手が矢加部なら「矢加部が見逃した所に瓜坂が気づいた」となるので問題ないのですが、語り手が瓜坂なので「情報を知りながら読者に教えてくれない、信用ならない語り手」と認識される可能性があるかと。

恥ずかしながら、一話読了後「マリーの死体偽装はどうしたのか?」と思ってしまいました。
それでもう一度読み返したところ、事務所での瓜坂とルイスの会話で「亡くなった」「生贄にされて殺された」という内容が何度も出ていました。
そのため、失踪ではなく殺害の印象が強まり「殺されたのだから死体があるはず」と思い込んでしまったようです。
例えば、現場検証時の瓜坂の台詞に「死体がないのが不思議なくらいの血の量」といった「死体がない」ことを強調する内容があれば、また印象が変わるかもしれません。

マリーが事務所を去った直後に矢加部が現れて驚くシーン、こちらも「なぜ矢加部は立ち去った人がマリーだとわかったのか?」という疑問が先立ちました。
おそらく、瓜坂がマリーの名を呼んだのが聞こえたからなのでしょうが、
 瓜坂が「お達者で。よい人生を、マリーさん」と言う
→マリーが去る
→瓜坂が空をしばらく眺める
と地の文にあるので、瓜坂がマリーの名を呼んでから結構時間が経った後に矢加部が来た、と判断してしまいました。
例えば、(姉妹なので)マリーはルイスによく似た面立ち、という描写があり、去るマリーとすれ違う形で矢加部登場、となれば矢加部の反応も自然に見えるかもしれません。

マリーが去った後に矢加部が怒るシーン。それまでに矢加部が嘘に対して嫌悪を示す描写がないため、唐突に感じました。
例えば、冒頭でヤマモトとの電話後に、矢加部が事務所に帰ってくるという形で登場するとします。街中で寸借詐欺の被害にあう人を見た、と怒る矢加部を、瓜坂がなだめつつ依頼人が来るから緑茶を買ってくるよう頼むなどすれば、尺をあまり使わず彼女の正義感や嘘嫌いを出せるかと。

〇黒幕について
創作相談掲示板の方で、黒幕が身内に入ることが受け入れられるかを質問しておられましたので、こちらに書かせていただきます。
御作を拝見した限りだと、問題なしと判断しました。
・悪事にことごとく失敗している(非道な印象がない)
 このオチに繋げたかったためなのか(二話の一部を除き)死者が出るようなこともないので、たいしたことはしていないという印象になりました。
 取り返しのつかない事をしていないというのは大きいです。
・非常に詰めが甘い
 彼女が若いからなのか、詰めの甘い行動が結構ありました。
 最大の失策は四話下で瓜坂をノックダウンした後、布などで彼の口を封じなかったことでしょう。
 瓜坂を詐欺師と知る以上、言葉が最大の武器とわかっているはず。
 そしてそれが命取りになっているのでルイスにドジっ子の印象がつきました。
・主人公に傲慢さを叩き折られている
 そのままです。四話下最後で結構な数の醜態を晒し、瓜坂にやりこめられているので、一読者としては溜飲が下がりました。
・美少女
 いいことではありませんが、相手が美少女だと温情をかけたくなるんです。
総括すると「ルイスはまた何かやらかしそうだけど、肝心なところでポカするだろうし大丈夫」となります。

〇細かい気になった点
・一話冒頭で矢加部が緑茶を買いに行くシーン~ルイス登場まで。
 「~紅茶と緑茶、両方買ってきます」から数えて十二行の間で、行頭に「はいはーい。」が三回書かれています。ちょっとくどいです。紙媒体なら下手すると一ページ内に「はいはーい。」が三回出てきかねません。
・一話のスリップジグ家の人間「モッド、イーディ、モーリス」の三人は存在感皆無で出てくる必要性も薄いため、削っても問題ないように思えます。
・二話で不自然に数字が挟まれますが、あれは「成平ループカウンター」でしょうか。
 だとすると御作は一人称なので「成平の存在を知る前の矢加部」が成平の死を感知していると読めますが、それを意図してカウンターを入れたのでしょうか。

申し訳ございません。三話以降の批評も書くつもりが、長くなったので後日に改めさせてください。
もし「重箱の隅をつつくようなことばかりで不快」であれば、遠慮なくこの批評は捨ててくださって構いません。

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