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凍った瞳 改稿版1
スレ主 silica 投稿日時:
以前に、ここで同名タイトルにて相談させて頂いた作品の、改稿版となります。設定などは何も変化してはいないので、そちらの確認もお願いします。
現在、プロローグを終われなくなってしまっていまして、どうにか切ってみたもののイマイチなので、どう終わらせたら良いかに関しても意見が欲しいです
プロローグ
早朝、もしくは深夜と呼ぶのが適切な闇の中、狼にも似た異形の生物がひた走る。何かを襲うため、というにはあまりにも必死の走りを見せる。
「そんなに逃げないで貰えますか?」
ありもしない吹雪を幻視させるような雰囲気を纏った少女が、その後を歩いて追う。普通に考えて早足程度にはなる速度で動いているが、本人の纏った雰囲気に、青を基調とした袴の組み合わせは、寧ろ優雅さを生み出す。
狼のような生物は、その少女に声を掛けられた直後に明らかに動きが鈍くなる。まるで寒さに凍えているかのように身体を震わせながら、必死に足を動かす。その後ろから、あまりにも屈辱的な、作業以上に思われていないことの分かる声がする。
「あまり睡眠時間を削らないので欲しいのですが……宿題も出来ていないというのに徹夜確定です」
その少女が、右手を天に掲げ、振り下ろすと共に、どこからともなく現れた氷柱が、狼の身体を串刺しにする。それは、最期の悲鳴を上げると、死体となって倒れる間もなく塵となった。
「やはり、この世界産の存在ではないですね……」
「だねえ。というか、凍華、確信してたからあのえげつなさなんじゃないの?」
凍華、と呼ばれた少女の後ろからもう一人の少女が歩いてくる。こちらの少女は、夜の闇がそのまま詰め込まれたかのような鞘の付いた一本の刀を左手に持っていた。
「ええまあ、否定はしませんが。というか八重、普通に正面から来てくれませんかね……」
「なんでさ? 私魔術師の人がこういう場面で正面から声掛けてんの見たことないんだけど」
そう、八重と呼ばれた刀を持った少女は言い返す。どちらも、雑談に打ち興じながらも、緊張を緩めることはなかった。ここが幾ら彼女たち魔術師にとって使い慣れた、言わばホームとでも言える場所であったとしても、本来この世界の存在ではない者がいる、という異常事態においては気の抜けない戦場なのである。
「アニメの見過ぎではないですか?」
「そんな事を言われてもね。実際やっている人は多いじゃない」
八重の脳裏に浮かんでいるのは彼女たちと同じく魔術協会に属している魔術師たちである。彼らの互助組織が、魔術協会を名乗っているのに倣って、魔術師を名乗るオカルトに携わる者たち。彼らの大部分は、リアルが描かれているほど派手でも楽しくもないからこそ、態々アニメや漫画で描かれる魔術師に自分の行動を寄せていくのである。
「多ければ良いというものでもありませんが……。例えば、そういう存在とかは」
凍華は振り向き様に、八重の後ろに氷柱を生み出す。その氷は、一瞬形を取ったものの、すぐに崩壊する。その半拍子の間に、八重は既に向き直って、剣を抜く。
「剣を抜くんですね」
「別に抜刀術は得意じゃないし。練習中の物をこのタイミングで出すわけにも行かないじゃん」
凍華の質問に、八重は眉一つ動かさず、それが当然であるかのように返す。それぞれ、意識レベルを警戒から臨戦まで引き上げる。相手の姿を捕捉した瞬間に、捕縛ないしは殺害を出来る体勢を整えたまま、睨み待つ。
結局、凍華の生み出した氷を破壊した存在、彼女たちが臨戦体勢に移った原因となる存在が現れることはなく、夜が明けた。本来ならば、夜のカバーは深夜組と早朝組の2班が午前1時を境に入れ替わるが、昨夜は諸々の事情により、彼女たちと追加二人は徹夜でカバーすることとなった。
だが、社会におおっぴらにされている訳でもない魔術協会のそんな事情は斟酌されるわけもなく、中学生の彼女達は普通に学校に行っていた。
「雲母、眠そうだな」
「すみません、先生」
凍華は、先生の思いつきによって生まれた古典の授業において、寝落ちしたことに関して突かれていた。起きている時はまじめにノートを取り、特に迷惑を掛けることもなく普通に参加するためそれ以上どやされることもないが、失態も失態なのだった。
かと言って、魔術師稼業を辞めるわけにもいかない。単純に人が足りないために、辞めたら他の人に負担が掛かるのだから……。
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