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作者 夕凪 得点 : 0 投稿日時:


遠くから波の音が聞こえてくる。
文明の力と言われるものは何もなく、あるのは月光に照らされた水面だけ。
そんなこの場所で僕はただ、目の前の少女を見つめていた。

潮風に髪を靡かせながら歩く彼女は、ひどく穏やかな表情を浮かべている。
傍から見ると、海岸にたたずむ恋人同士のように見えるだろう。
一つ、カップルとは違う点を挙げるとすれば
ーー
彼女の顔に全く身に覚えがない、という点だろうか。

でも、それでも。僕の心は満たされていた。
なんというか、胸の奥が暖かくて心地が良いのだ。
不思議な気持ちだった。

ゆっくりと足を踏み出し、彼女の隣に並ぶ。
彼女は気づいたのか、こちらを振り返った。
瞳が、僕をうつしている。

「…君は?」
僕の声は、思ったより小さく出た。
「ここにいる人。あなたは?」
彼女は微笑んで、静かに答える。
波の音が、僕たちを優しく包んだ。

ふと、遠くの岩場で、何か光るものがちらりと見えた気がした。
彼女の足取りが、少し速くなる。
僕も、ついていきたくなる。
この穏やかな夜の先に、何が待っているんだろう。波のささやきが、答えを隠しているみたいだ。




どれくらいの時間が経っただろうか。
潮風が強くなり、視界が少しずつ揺らぎ始める。
そっと、彼女の手に触れた。
月明かりの下で、彼女の表情はぼんやりとしか見えないのに、その感触は確かに優しく胸を締めつける。

最後に視線を上げると、彼女のシルエットが切ない影を帯びていた。
悲しげな輪郭が、夜の闇に溶け込みそうで、心がざわつく。
彼女の指を、強く握りしめる。
離したくない、この瞬間を。
意識の淵で、彼女の存在が鮮やかに消えた。

作者コメント

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非現実と現実を行き来しながら、彼女との関係を探っていくファンタジー系恋愛小説

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