オミクロンです。一読させていただきました。ご自覚の通り、情景描写が致命的です。他にも目立った粗があるため指摘させていただきます。
まずは情景描写が致命的に不足している点を挙げさせてください。
2話【勉強】の冒頭で、「朝食後」と出てきます。これでまだ朝なのは想像がつきます。ですが、主人公はどこにいて、何をしているのでしょうか。家の中にいるのか、外にいるのか、はたまた図書館にいるのか。想像の余地が大きすぎます。
更にいきなり何の情報もなくリリという人物が出てきます。誰でしょうか。なぜ主人公に親しげなのでしょうか。何故教育ができるのでしょうか。その前の話と、文脈を見ても全く情報がありません。
以上の事を鑑みて、私が想像で補いまくった2話の最冒頭を拙文ですが書かせてください。
【ここから】
朝食後、朝日に照らされるリビングの椅子に座りながら、教育係のリリの話を聞く。
「さ、ユリス様。明日は大切な祝福の儀です。今日のうちにちゃんと勉強しますからね」
「はぁい」
明日が祝福の儀とあって、彼女はとても張り切っていた。
過去からの転生者である僕には必要ないと思うんだけどな。まぁ事実を言うわけにはいかないし、仕方ないか。
【ここまで】
いかがでしょうか。この数行の文章で、まだ昼ではないこと。主人公は家の中にいて、リビングの椅子に座っていること。教育係のリリという女性の話を聞いていることが容易に想像つきますよね。
足りていないのは必要最小限の【5W1H】です。「いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように」です。最小限のものすら欠くと、読者としては想像の余地が膨らみすぎて、読んでいて疲れます。ご注意ください。
次にもっと致命的な情景描写の不足を指摘します。人物描写です。
3話【祝福の儀】の冒頭にて、メインキャラクターと思わしきエルという人物が出てきます。ですが彼に対する情報、描写が圧倒的に不足しています。
文中では金髪イケメンボーイとしかありません。髪の色と性別は確定しますが、それ以外を確たるものにする情報、描写がありません。エルの体格は? 年齢は? 瞳の色は? 肌の色は? 疑問が尽きません。これも先ほどと同じように書いてみます。
【ここから】
「ユリスごめん待った?」
「いや僕も今来たとこだよ」
目の前に同じくらいの年の男の子が駆け寄ってくる。彼はエル。幼いころからの友人だ。
ショートヘアーの髪は、黄金を溶かしたようで、朝日に照らされ輝いている。空色の瞳は同性だというのに見惚れるほど透き通っている。それらが肌という白いキャンバスの上で一切の歪みなく置かれているんだ。この顔に見つめられれば、大抵の女の子は一瞬で落ちるだろう。
【ここまで】
どうでしょうか。少しは私が見たエルを見ていただけたでしょうか。もちろんこの後にも声のトーンや、身長差などを描写することも出来ます。
以前他の方々にも言及したことを挙げます。作者のイメージを、文字だけで読者と共有することは難行です。「ここはこう補完してくれるだろう」ということに強く依存することは、作者の甘え以外の何物でもありません。
確かにいちいち登場人物や、場面変更の際に詳細に描写をしていたら、読む方もおっくうになります。ですがその必要不必要は推敲していけばいいだけの事です。なので最初は多く書いて、後から不必要を削っていくくらいで丁度いいと思います。
次に、人に読んでもらえる工夫をしましょう。詳しくは【第2研究室・基本的な文章作法】に書かれています。特に直さなければいけないのが、改行の活用と、1文の長さへの配慮、読点です。
まず、文章の禁則を破っています。段落はじめは1字下げる。これができていません。これに関しては大原則なので、必ず守りましょう。
次に、段落分けがされていないせいで非常に読みにくく、また億劫になります。これに関しても【第2研究室・基本的な文章作法・改行を活用する】に書かれていますので、詳しくは割愛します。
ですが、一つ留意できる点として、会話文、発言文。つまりはかぎかっこ内にも有効だということを覚えておいてください。
次に1文の長さへの配慮、読点です。これに関しては論ずるよりも訂正を見せた方が早いので、直した文を掲示します。
【ここから】
呆れているサクラを放置して、まずは学校を買うためエクセアを起動した。A級魔石で学校を買うと、目の前に召喚陣が現れ校舎や研究棟、訓練施設などが召喚された。
【ここまで】
お分かりいただけるでしょうか。たった二つの読点と、一つの句点を付けるだけで結構変わりますよね。原文とこちらの文を音読した場合、どちらがいいかは一目瞭然だと思います。つまりは、そういう事です。
最後に、不必要、不適切な情報が多いです。特に1話が非常に冗長です。転生して、自身の状況を確認して、6人家族がいたことを確認する。それ以降は完全に蛇足です。
なぜまだ文中に登場していない人間の情報を、事細かに書く必要があるのでしょうか。ましてや、そのタイミングで説明する理由がないにもかかわらず。人物描写に関しては、基本的にその人物が登場した瞬間にやるのが好ましいです。
例外は、そのタイミングで説明、描写をしなければならない明確な理由がある場合のみです。
これをされると、読者からすれば「これ、いる?」となります。そして、丁寧に描写したにもかかわらず、その描写を忘れられます。双方にとって百害あって一利なしです。
説明に関しては基本的に、必要なタイミングで適宜に適切な量を出していくのが原則だと思ってください。他の方にした例えを引用させていただきます。
情報開示において秀逸な例えを出したいと思います。かの名作漫画「NARUTO」の螺旋丸の修行を思い出してください。
仮にあの場で自来也が螺旋丸の全てを説明していたら、ナルトはついていけませんよね。自来也の立場が筆者(神)で、ナルトの立場が読者だと考えればお分かりいただけるでしょうか。
総括します。自分の書いた文章を、時間を空けて読み直したでしょうか。恐らく否だと思います。読み返していれば必然的に気づく欠陥を放置しています。
なので、推敲をしましょう。自分の文章を冷静になって読み直して、読者の目線で自分の作品を評価しましょう。そうすれば読者と作者の間にある、イメージの乖離は埋められていきます。
酷評、失礼しました。