死支度致せ致せと桜哉
一茶
〈俳句の裏技〉
俳句は写生だ、見たまま感じたままを書け、とはどんな俳句入門書にも書いてある。
では私は凍滝を見たか?
否、凍滝どころかふつうの滝すら、現実には見たことがない。
花鳥諷詠を旨とする流派がある。
それはそれで良いと思う。上手下手の差はあれ、誰もが滝を見て滝の俳句を作ることが出来るわけだ。
虚子の花鳥諷詠流は画期的に俳句人口を増やし、俳壇を席巻している。
それはそれでよい。
俳句結社という所へ入り、月謝を払えば、老後は誰もが俳人と称する詩人になれることになった。
妻子を捨て、寒暑に耐え、乞食のような苦しい人生探求の旅をせずとも、誰もが俳句を楽しみ、ボケ防止と団欒を兼ねた句会や吟行を楽しめるわけだ。
しかし、本当にそうか?
大結社の宗匠の息子や娘が跡目を継ぎ、詩人でもないのに看板を掲げて指導料をとる。
なんか、おかしいよ?
話が逸れたが、滝を見たことのない私が滝の句を如何にして詠んだか?
この種明かしが今回の裏技でしたね。
一言で言えば、俳句は創作~フィクションなのです。
写生はスケッチに過ぎない。
スケッチ出来ない場合は、写真や動画や文献や過去の名句などを材料として
対象の本質へ迫り、イメージを掴んでいくことです。
凍滝の生命感を鷲掴みにし、五七五の文字で再現することです。
〈三番勝負〉
小林一茶
1763-1828
江戸時代の代表的俳諧師。信濃の人である
〈一番〉
一村はかたりともせぬ日永哉
一茶
火の国の地鳴りに暮るる日永かな
悠
〈二番〉
蝶とぶや此世に望ないやうに
一茶
てふてふやあの世この世を往き戻り
悠
〈三番〉
夕ざくらけふも昔に成にけり
一茶
朝桜いのちびろひの空仰ぐ
感動の一句を教えてください。