初空や大悪人虚子の頭上に
高浜虚子
明治七年愛媛県松山に生まれる。
第二高等学校を中退、正岡子規に兄事して俳句を始めた。
松山で創刊されたホトトギスを東京で発行する。
初め小説家を志すが、俳句一本に転向、のちに俳句界に君臨した。
句集「五百句」「六百五十句」などの他に俳論書など多数あり。
勝負の一
物どもを叱咤して去る秋の風
22才
秋の風/を擬人化した句で、秋の風は台風または野分のこと。
物どもは者どものことで、地上の草木や動物や人間を言う。
台風(自然)の大いなる力を句のメッセージとする雄渾な一句である。
他に
風が吹く仏来給ふけはひあり
怒涛岩を噛む我を神かと朧の夜
海に入りて生れかはらう朧月
菫程な小さき人に生れたし
酌婦来る灯取虫より汚きが
春風や闘志いだきて丘に立つ
等々、若き日の精神の激しい振幅を示す作品が多く見られる。