とりあえず最後まで読んできました。
まず、零話を読んだ感想なんですけども。
>これはそういう、物語だ。
僕「ど、どういう物語だ……?」
今回は批評ってことで最後まで拝読させて頂いたのですが、もし僕が娯楽やら趣味やらっていう目的でこの小説を読み始めたなら、多分この時点でブラウザバックしてます。
所詮はプロローグなのでここだけで物語の主旨を理解し切るのはまぁ無理だとは思うけれど、それでも読者としてはどういう状況で何をしているのかくらいはわかるようにしてほしいですね。
何をしているのかわからないプロローグなんて正直いらないです。
わかるように書くか、プロローグ取っ払うかどっちかだと思います。
ただ、「会話そのもの」は確かにちょっと面白かった。
「腹を切られたのは初めてだ」
「私も、人のお腹を裂いたのは初めて。これでもこの前まで純粋無垢だったんだから」
「処女だったしな」
「殺すよ?」
こういう、状況が理解できてなくてもクスッと笑えるような会話をプロローグに持ってくる辺りは、結構センスを感じました。こういう始まり方は結構好きです。
ただ、「状況が理解できなくても笑える」というのが許されるのはここまで。
最終的にはプロローグ全体で何をしているのかはわかるものにしなきゃ、その面白さも意味ないってことです。
漫才師が最初に面白い事を一言だけ言って、あとはもうよくわからない。なんてそりゃないでしょう。
零話を読んで、結論は、
「最初はちょっと面白かったけど、あとはよくわからない」
って感じです。
でも逆に言えば、「わかるように書いてくれたら多分普通に面白い」とは思います。
次に、第一話を読んだ感想を。
まず、「早く始まってくれ」って感じでした。
説明欄に書いてあった、
>雪華はある夏の日渋谷で、血の化粧をした少女と出会った。
っていう状況になって初めて物語が始まる訳なんですが、結局一話ではそうなる気配もありませんでした。
これって仮面ライダー作品の一話で主人公が変身しないようなものなんですよね。
まぁ、たとえ物語が始まってなかったとしても、読者としては「面白ければ多少は許せる」みたいなところがあります。桃太郎の「むかしむかしあるところに〜」みたいに「無いと困る前置き」もあります。まぁ、たしかに面白さはあったけれども話の本筋を後回しにするほどではないし、「絶対必要」とは感じませんでした。
少なくとも一話の最後くらいで少女と出会うか、面白くて絶対に必要な前置きにするか、あたりじゃないと読者は「早くしてくれよ〜」ってなって読むのをやめちゃいます。
あと、固有名詞が多い。
歴史や公民の教科書ってほぼ固有名詞図鑑みたいなものだと思うんですが、あれを初見で一気に100行も200行も読むとなったら結構しんどいと思います。
しかも小説の場合はその固有名詞を覚え、意味を理解し、物語を読み進めていかなきゃならない。
固有名詞が多いと読者の頭がパンクします。パンクするのでその前に読者は読むのをやめます。
こういう固有名詞は、伏線でもない限り必要となったその時に出すのがベストです。
火罌粟の話あたりも、流石に能力名まで出す必要は無かったんじゃないかなぁと思います。
さらに、突然設定を語りだすのも気になりました。
>能力が世間に発表された時点で政府は新たな法律の案を可決させた。それは、『能力を使った商売の禁止』である。能力とは謂わば才能で、言い換えるのなら『運』だ。
能力による商売を許可してしまったら、世界中の情勢が一気にひっくり返ってしまう。それを危惧した政府はこの法律を定めたと言う訳だ。
この説明、ここで出す必要性を感じられないんですよね。
というか、僕はこの説明を見て、「世界中の情勢がひっくり返るほどの能力をたかが法律で縛れるのか? そもそもそんな能力者達がいる時点で政府なんてものは成立しないんじゃないのか?」なんていう余計な疑問を抱いてしまいました。
まぁ捉え方は人それぞれだと思いますけども、こういう世界観に深く突っ込んだ設定は読者に余計な疑問を抱かせることがあるので、出すのはオススメしません。
物語に関係ないところは読者のイメージでいいと思います。
もし物語に関係あるのだとしたら、今無理して出す必要はないです。
この第一話を一言で言うなら「説明くさい」ですね。
物語に直接関係ないところは削ぎ落として、別に今この時点で出す必要のないものは後回しにして、すぐに始めたほうがよっぽど面白いです。
例を出すなら異世界転生。
あれは主人公が異世界に行けばとりあえずは説明なしで物語が始まるから凄く読みやすくて無駄がない。
大抵は物語の本筋をストレートに書いたほうが面白くなるとおもいます。
続いて第二話。
二話目になってもまだ主人公が仮面ライダーに変身しなかったって感じです。
本文そのものから読み始めたならまだ大丈夫だとは思うんですけども、説明欄で「少女と出会う」と明記され、そういう展開を思わせるプロローグ(零話)まで読んでからとなると、やっぱり読者にとっては遅すぎますかね……。
>微妙に噛み合っているようで合っていない会話である。
細かいとは思うんですけども、こういう表現も個人的には蛇足だと思います。
直前の、
「いつも思うけどよ、甘くねぇのか?」
「甘いよ」
「甘いのか」
「甘いよ」
というところを読めば、これが「微妙に噛み合っているようで合っていない会話」なのは普通にわかります。
完全に自分の解釈で申し訳ないのですが、「次に繋げたいのだけれど上手く繋がらないからとりあえず説明だけしてテンポを稼ぐ」という意図で書かれたようにも思えました。
もしそうなら、とりあえず「そして〜」を使って繋げておく、というのと同じです。自力で上手く繋げるしかありません。
これが単に僕の勘違いなら、「蛇足ですよ」とだけ。
第二話を読んだ感想自体は、全体的に第一話を読んだときとほぼ同じですかね。
一、二話を通して「説明くさい」感じがしました。
>これには彼が『師匠』と呼ぶ人物が関係するが、それは又別の話だ。
一話に出てきた一文ですが、こういう文からあからさまに説明しようとしているのがよくわかります。
設定は「説明」するものでなく「使う」ものなので、読者にあれこれ教える必要はありません。
普通に物語を進めていき、ここぞというところで使えば読者はちゃんと理解できるし、そっちのほうが面白いです。
あと、少女と出会ってからはじめて物語が始まると言いましたが、正確に言うと「少女の真相を知る」ってところが物語のスタートになるはずです。
物語の主旨はおそらく「その事実を知った雪華は、暦を救うために強くなることを決意する」ってところでしょうからね。
大半が設定の説明な雪華とノエルの絡み+唐突な戦闘
↓
少女と出会ってなんたらかんたら
↓
少女の真相を知る
これはつまり、
前置きの前置き(←いまココ)
↓
前置き
↓
物語スタート
っていう訳ですね。
絶対に読み手としてはキツいです。
話の前半を取っ払えとまでは言わないので、一度中身を整理してみることをオススメします。
長くなりましたが、結論を申しますと、
・抽象的なプロローグは不要
・前置きが長い
・設定の説明が多い
・文体からあからさまに説明しようとしている
・蛇足な表現が所々見られる
というあたりです。
要は物語の本筋をもっとストレートに書いたほうがいいということです。
読者は作者の思うよりも中身を理解してくれないし、理解できないものを無理して読もうとしません。
話の本筋が何かを見直してみて、できるだけ直接的でわかりやすいものを目指して下さい。