読了させていただいたので総括コメントとなりますが……
うー、なるほど、ご自身で「詰め込み過ぎ」と言われのがよくわかりました。
ニビ族について、戦争シーンに関して、陰謀に関して、勇者と女神の力に関して、エミリアの気持ちに関して、リューリの正体に関して、すべて中途半端な状態、という感じです。
タバコ関連の描写だけやたら丁寧な感じがしましたが、ここだけ洋画の世界に飛んだ感じ。
あと、レトロなハイファンタジーのつもり、ということですが、私にはアリアンロッドRPG風、勇者だけセブン=フォートレスという感じにとれました……
ちなみにアリアンロッドは、ヘイスト・プロテクション・フライトは併用前提の戦術が組まれています。他クラスもですが、アコライト系(僧侶タイプ)自体が割り込み処理の多いスキルを保有していて、このクラスを選んだキャラクター自体がマルチタスク能力者のような状態です。50人に1人って多いよ、宮廷魔術師のおじいちゃん相手がプロテクション使いだってわかった時点でプロテクション貫通技(上級職のスキル)仕掛けてくるくらいやらんと……このタイプウザいんだもん。「僧侶は真っ先に潰せ」は定石です。
>当然ごくごく短時間のことで、時間を無駄にしてはいません。
それでも遅いですね(バッサリ)。覚悟を決めるのは、エミリアが自己犠牲の呪文を唱えた直後です。敵の攻撃を防いでいる間中に、起こっている悲劇とやるべきことをしっかり胸に刻みつけないと。スレイヤーズのリナは、味方の犠牲を目の当たりにしている状態で「自分は呪文詠唱を続けた。止まることは許されない」という描写をしています。
>完成から3ヶ月ぐらいしか経過していない急造メンバーです。
長いですね(バッサリ)。現実世界・日常世界の三カ月と戦闘状態の三カ月を同じにしたらいかんです。スレイヤーズは急ごしらえのパーティでも、戦術・戦略面でくだらない諍いは起こしていません。
ノンフィクションで傭兵の体験をした方の著書を読みましたが、傭兵志望者は「若く充分に体力があること、英語(共通語)が堪能で仲間としっかり意思疎通がはかれることが最低条件。なければ仲間の迷惑になるだけだからやめとけ」と言っています。ファンタジーでは魔法のぶん体力は大目に見てもらえますが、未熟さのわかりやすいシルヴァだけでも充分に危険ですが、人間の言語・感情に不慣れと思われるリューリも相当な足手まといです。よく三カ月も生きてこられたな、という感じ。これで『お気楽』に魔王城に乗り込む気に全くなれませんわ。
>エミリアに関しては、作者の意図を超えて案外良く仕上がってしまった感があります。
親(作者)としては子(キャラクター)の成長は喜ばしいことですが「死人に物語を乗っ取られる」状態になっている感じですね。最後リューリとくっついてもなんだかエミリアの影を払拭できていない、という感じです。
最初からアレク・リューリのペアでハードボイルド風にまとめるか、「二人の勇者が同時代に現れること」に重点をおいて空の女神の神話などでクラシック調に盛り上げるが、いずれにしてもどれかひとつふたつだけ要素を取り上げてしっかり消化したほうがいい感じですね。確かに「詰め込み過ぎ」に尽きる、としか言いようがありません。
あと、少し真剣に考えて欲しいのは「この伏線は、本当に『伏せる』必要があるものだろうか?」ということ。何というか「何でもかんでも伏せまくり」という感じがしました。少なくとも「明かした時」にあーなるほど、そういうことだったんだ!と思えるものかをよく考えてほしい。今回いちばん気になったリューリの正体に関しても肩透かしをくらったような感じでした。伏せてやられっぱなしで見せ場ないくらいなら最初からガンガン全力でいきましょうよ……という感じでしたね。
ともあれ、この作品、世界観から要素を小分けにして色々な作品を生み出すことは楽しそうだなと思いました。次回はぜひ、ひとつふたつに絞ってじっくりその要素を堪能できるものを作ってみてほしい、と思います。以上です。